1. はじめに:エンジニアがkintoneに触れる
ずっとスクラッチのシステム開発(フルスクラッチでの設計・実装)を主戦場としてきた私ですが、最近はお客様から「開発コストを抑えたい」「導入後、自分たちで保守・運用できる仕組みにしたい(ノーコード)」という切実な声を多く聞くようになりました。
そこで数あるノーコードツールの中から、特にカスタマイズ性の高いkintoneに着目しました。
背景にあるのは、多くの現場で「負の遺産」となっている「Excelマクロのブラックボックス化」という普遍的な課題です。これをkintoneという近代的なプラットフォームで、いかに「持続可能な形」に再構築できるか。そこがエンジニアとしての私の挑戦の始まりでした。
2. 直面した課題:標準機能だけでは超えられない「集計の壁」
RDB(リレーショナルデータベース)でいう「テーブル」を、kintoneでは「アプリ」という単位で扱います。
「社員マスタ」「サービスマスタ」といったマスタデータを参照し、日々の活動を記録する「トランザクションアプリ」を作ること自体は、kintoneの標準機能で驚くほどスムーズに実現できました。
しかし、大きな壁となったのが「複雑な集計ロジック」です。
単なる数値の足し算ではなく、以下のようなビジネスルールが絡む場合、標準機能だけでは対応が難しくなります。
• 「利用開始月は無料にする」
• 「解約日が15日以前なら当月分は0円、16日以降なら満額請求」
これをノーコードで、かつ誰が触っても壊れない「堅牢なシステム」として実装するには、標準機能の枠を超える必要がありました。
3. 解決策の比較:DataCollect vs krewData
この「標準機能の限界」を突破するための外部サービスとして、市場で圧倒的なシェアを持つのが、トヨクモ社の『DataCollect(データコレクト)』と、メシウス社の『krewData(クルーデータ)』です。
■ DataCollect(関数型・リアルタイム集計)
アプリの画面上で、Excelのように数式(SUMやIFなど)を直接入力して計算させるツールです。
• メリット: Excelの延長線上で設定できる手軽さがある。
• 懸念点: 数式の中にロジックが隠蔽されがち。数が増えると「どのフィールドにどんな式があるか」の把握が難しく、スクラッチ開発でいう「スパゲッティコード」に近い状態になるリスクを感じました。
■ krewData(ETL型・バッチ処理集計)
複数のアプリからデータを吸い上げ、工場のライン(フローチャート)のように加工して、別のアプリへ一括で書き出すツールです。
• メリット: データの結合(JOIN)やフィルタリングの流れが視覚的に固定される。
• エンジニア視点: データフローが可視化されているため、不具合時の切り分けが容易で、構造が非常に直感的です。冒頭にフローイメージも作ってみました。
4. 決め手は「3年後のメンテナンス性」と「デバッグ」
システムは「動く」のは当たり前です。本当に大切なのは「3年後に自分以外の誰かがメンテナンスできるか」という点です。
お客様の中にはExcelに詳しい方もいらっしゃいます。しかし、なまじExcelが使えてしまうと、複雑な数式を無理やり組み込んでしまい、結局「作った本人しか直せない」状態に戻ってしまう危険性があります。
その点、krewDataは「数式を意識させすぎない」UIです。集計や条件分岐がノード(図)として表現されるため、エンジニアも非エンジニアも同じ土俵で「データの流れ」を理解できます。結果的に、これが「お客様自身で運用を回せる」という真のノーコードの価値に繋がると確信しました。
5. まとめ:エンジニアがノーコードを扱う「真の価値」
Excelで実現されている現行業務には、必ずといっていいほど「泥臭く複雑な条件」が潜んでいます。
その要件をただツールに詰め込むのではなく、いかにシンプルで安定した「データのパイプライン」に落とし込めるか。そこがエンジニアの腕の見せ所です。
道具が変わっても、設計思想の重要性は変わらない。そう感じたツール選定でした。









